思春期の虎の巻[第十五回] (最終回) 四十ニ歳 「人生に帰れたとき」

思春期の虎の巻

2019.04.09

思春期から大分たって四十二歳の秋、私は二十年好きだった人に振られてしまいました。 その人は、別れの言葉も無しに、別の女性と結婚してしまったのでした。 「川上さん(仮)、結婚されたそうですよ」 人づてに聞きました。 言葉も出ませんでした。 私は誰にも打ち明けないままにしました。 その頃、私は雑貨屋のアルバイト店員だったので、睡眠薬に頼り仕事を続けました。 しかし限界が来たのです。 二か月後、次第に状況が飲み込めてきた私は、涙が止まらなくなりました。 嗚咽も止まりませんでした。 処方された眠剤では眠...

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思春期の虎の巻[第十四回] 二十歳 「思春期も終わりに近付こうとして…」

思春期の虎の巻

2019.03.19

成人式が終わった時、 「ごめん!このあと一緒にビールは飲めない!」 と私は翠(仮)に叫びました。 その頃には中学校で一緒だった、翠しか友達と呼べる人が居なくなっていました。 私は自分の異常に興奮した頭を現実に合わせて生きるので、精一杯でした。友達が一人、また一人と去って行ったのです。 (ビール?それどころじゃないよ) 私は内心そう思いました。 能天気な翠に苛々していたのです。 私以外の新成人は晴れやかにはしゃいでいました。 そうして、翌日が高校の最後のテストだった為、翠を残して家に帰りました。 ...

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思春期の虎の巻[第十三回] 十九歳 「ロウソクの火は灯っているか」

思春期の虎の巻

2019.03.05

(…いい加減にして!) 私は心の中で悲鳴を上げていました。 もう、三十分も奈美恵(仮)の電話に拘束されていたからです。 彼女は最近好きになった曲だと言い、受話器にステレオをあて私に音楽を聞かせていました。 三十分もです。 私は無言でそれに耐えていました。 「森さん、お兄ちゃんと分かり合えたの!」 彼女は電話をその報告からし始めました。 声はうわずっていました。 私たちは共に十九歳で通信制高校のクラスメートでした。 そうして彼女も鬱を患っていました。 私はその時、極度の躁状態でした。 何もしなくと...

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思春期の虎の巻[第十一回] 十七歳・二 「新たな彷徨の始まり?」

思春期の虎の巻

2019.02.21

十代の新しい友達は皆、傷を抱えていました。 四月に私はNHK学園通信制高校の二年生に編入してそう感じたのです。 二度目の高校二年生でした。 中高年の生徒の他、クラスには私と同じ年頃の若者も沢山いました。 不登校の子や、妊娠中絶を経験した為に弱っている子達。 その中に私は昔住んでいた団地の幼馴染の少年を見つけました。 「圭太君? おばさん元気?」  私はさり気なく彼に声を掛けました。 彼は運動が出来て、県下でも優秀な私立高校に進んだと記憶していましたので、内心は驚いたのですが。 彼は困ったように視...

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「もっと引いて見てごらん」心の病気は心で治す 【17歳の経験】

思春期の虎の巻

2019.02.05

「嫌! 私は狂ってなんかいない!」 母が精神科へ行こうときり出した時、私は思わずこう叫んでいました。 『精神科』というものに偏見があったのです。  (…もう、自分はおしまいだ) そう思いました。 烙印が押されてしまうのだと。 随分抵抗した事を憶えています。十七歳の夏の事です。 それでも引きずられる様に、K医大学病院の精神科に連れて行かれました。 脳波に異常はありませんでした。 とにかく無気力で体が重く、疲れやすくて、表情が無くなっていました。 鏡の中の自分の目が虚ろそのものなのに気付いてはいたの...

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思春期の虎の巻[第十回] 十六歳・二 「やっと休める事に…」

思春期の虎の巻

2019.01.22

高一の夏休み、部活の昼ごはん買い出しの時の事です。 「…フラフラしやがって」 カップラーメンを買いに行った先の、食料品屋の五十年配の経営者がレジをうちながら、私に向かって言いました。 その男の妻も鼻で笑いました。 私は驚き彼らを見詰めました。 演劇部の仲間にもお道化るしか繋がる手段を持たない私は、反応が出来ませんでした。 出来た事は二度とそこの店で買わない事だけでした。 二学期に入ると私の授業への不参加は増えて行き、特に体育のサボりは酷いものでした。 もとからスポーツが苦手だった私は、更に鬱の為...

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思春期の虎の巻[第九回] 十六歳・一 「袋小路に迷い込んで」

思春期の虎の巻

2019.01.09

「森さんの真似~!」 授業中の教室の隣の席の男の子が、背を丸めました。その子の後ろの席の男子が声をたてて笑いました。 K高校に入学して二か月が経っていた頃の事です。 私は虚ろな目で彼らを眺めた様に思います。 実際、私は姿勢悪く席に座り、無気力な状態でした。 彼らを嫌だとも何とも思いもしませんでした。 授業にはついていけませんでした。 私の頭には何も入って来ませんでしたから。 唯々、分からない内容を聞くだけの日々が、苦痛で仕方がありませんでした。 二か月経ってもクラスで友達は一人も出来ませんでした...

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思春期の虎の巻[第八回] 十五歳・二 「ピンチはチャンス」

思春期の虎の巻

2018.10.15

今回は、中学生にとっての最大の難関、高校受験について書きたいと思います。 前にも書きました通り、私は中学二年生位から鬱の兆候がありました。 しかし、お調子者を演じる私を誰も問題があるとは気付く事はありませんでした。 それでも、私は前にも増して生活がだらしなくなって行きましたし、成績も徐々に落ちて行ったのでした。 神奈川県にはその当時、「アチーブメント・テスト」という物があり、二年生の三学期に受け、公立高校の受験にも適応されていました。 主要五科目だけでなく、全教科の学力テストでした。 私はその「...

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思春期の虎の巻[第七回] 十五歳・一 「中学部活、最後の日々」

思春期の虎の巻

2018.09.25

思い返すと 「馬鹿にされてる」 「皆に好かれなくてはならない」 この二つが今でも続く、幼い頃より作り上げられた、私のマイナスな心の法則だった気がします。 中学三年、私にはけ口として向けられた米田さん(仮)の怒りは、益々つのるばかりでした。 彼女とは一度も同じクラスになった事はありませんでしたが、彼女へのクラスメートの苛めはエスカレートしていたようです。 「森さんは、自信あるから嫌い!」 米田さんは私に言い放ちました。 私がその言葉に縮み上がっている事を知っていたからです。 彼女の目はギラギラと尋...

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思春期の虎の巻[第六回] 十四歳・四 「大人はわかってくれない」

思春期の虎の巻

2018.09.15

思春期の子供にとって、認識を変えるのは難しい事です。 やっと自意識が芽生えたばかりで、客観視はこれから学ぶのですから。 私は精神状態が不調になっても、まだ力に憧れていました。 何と馬鹿な事に、二月の時任先輩(仮)の卒業時に、胸のボタンを貰いに行ったのです。 なんとまあ。 呆れますね。 閑話休題。 時間は少し戻って、前回お約束した通り、私と漫画との関わりについてと、クラスでの私の様子をお話しします。 中学二年生の年末、演劇部の同級生、三木さん(仮)の発案で漫画の同人誌(コピー誌)を仲間で作ることに...

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