対話とは

1.定義

対話技法の構造化とは、語られた内容を「出来事・考え方・感情・行動・背景要因」に整理し、混在した情報を明確な枠組みに再配置する対話技法です。

対話技法の構造化は、話を要約する技術ではなく、話の内部にある連鎖と核心を可視化する専門的整理技術です。

認知行動療法士フォーラム

2.技法の目的

人は感情が高まると、話が広がります。
時間軸が前後し、評価と事実が混ざり、要点が曖昧になります。

構造化の目的は三つです。
1.情報の混線を整える
2.問題の核心を特定する
3.次の行動に結びつく形へ整理する

構造化は、理解を深めるための知的作業であり、安心を生むための心理的作業でもあります。

3.固定プロセス(7段階)

第1段階:話題の焦点化

「今日はどの出来事を中心に扱いますか」
扱うテーマを一つに定めます。


第2段階:時系列の整理

「最初に何が起きましたか」
時間軸を整えます。


第3段階:事実と評価の分離

「実際に起きたことは何ですか」
「その受け止めはどうでしたか」
出来事と意味づけを分けます。


第4段階:感情の特定

「どんな気持ちでしたか」
感情を具体化します。


第5段階:行動の確認

「その後どんな行動を取りましたか」
反応パターンを明らかにします。


第6段階:核心の抽出

「この話の中心は何でしょうか」
主題を明確化します。


第7段階:構造提示

「整理すると、
出来事 → 受け止め → 感情 → 行動
という流れですね」

可視化して共有します。

4.逐語ケース(長文)

ケース:職場の人間関係

相談者Bさん(40代)

B
「上司との関係がうまくいきません」

支援者
「今日はその関係を中心に整理してみましょう。最近の出来事は何ですか」

B
「昨日、提案が却下されました」

支援者
「最初に起きたのは提案却下ですね。その前の流れはありますか」

B
「準備には時間をかけました」

支援者
「却下されたとき、具体的にどんな言葉がありましたか」

B
「方向性が違うと言われました」

支援者
「それをどう受け止めましたか」

B
「能力不足だと思われた気がしました」

支援者
「その受け止めが浮かんだのですね。感情は」

B
「悔しさと怒りです」

支援者
「怒りの強さを数字で表すと」

B
「70くらいです」

支援者
「その後の行動は」

B
「会議後、上司を避けました」

支援者
「整理すると、
提案却下 → 能力不足と受け止め → 怒り70 → 回避
という流れですね」

B
「そうです」

支援者
「この話の中心は何だと思いますか」

B
「評価への敏感さかもしれません」

支援者
「評価が関係の鍵なのですね」

B
「はい。評価が下がると存在価値が揺らぎます」

支援者
「存在価値と評価が結びついている感覚ですね」

B
「その通りです」

支援者
「ここまで整理すると、課題は“提案”ではなく、“評価と価値の結びつき”かもしれません」

B
「確かにそうです」

この瞬間、問題の焦点が変わります。

アドバイス

5.よくある失敗

1.話を途中でまとめてしまう
2.感情を飛ばして事実だけ整理する
3.支援者の解釈を優先する
4.話題を広げすぎる
5.早期に助言へ進む

これらは構造の共有を浅くします。

6.修正版逐語

誤った例

B
「上司が嫌です」

支援者
「上司も忙しいのでは」

→ 焦点がぼやけます。

修正版

支援者
「どの場面が印象に残っていますか」
「その言葉をどう受け止めましたか」

→ 構造が明確になります。

7.応用

(1)家庭

家族
「いつも分かってくれない」

構造化
出来事:意見の違い
受け止め:理解されていない
感情:寂しさ
行動:沈黙

整理すると、対話の方向が変わります。


(2)職場

部下
「仕事が多すぎます」

構造化
出来事:業務量増加
受け止め:期待に応えられない
感情:焦り
行動:残業増加

課題は業務量だけでなく、自己評価軸です。


(3)支援現場

クライアント
「生きづらいです」

構造化
出来事:対人摩擦
受け止め:拒絶される
感情:不安
行動:回避

構造が見えると介入点が明確になります。

友人

Ⅰ.家族面接型構造化

― 多者の語りを同時に整理する技術 ―

① 技法の本質

家族面接型構造化とは、複数人の語りを同時に整理し、
「出来事」「意味づけ」「感情」「行動」「相互影響」を可視化する対話技法です。

個人面接と異なり、
複数の主観が同時進行します。

そのため支援者は、
・内容
・感情
・関係性
・力動
を同時に扱います。


② 基本フレーム

家族面接では、以下の5軸で整理します。

1.共有された出来事
2.各人の意味づけ
3.各人の感情
4.各人の行動
5.相互影響の循環


③ 逐語ケース(夫婦)

登場人物
妻C
夫D
支援者


導入


「夫が話を聞いてくれません」


「聞いています」

支援者
「今日は“聞いているかどうか”の場面を整理してみましょう」


出来事の特定

支援者
「最近の具体的な場面は」


「昨日、子どもの進路の話をしました」


「そのとき私は疲れていました」


意味づけの抽出

支援者
「妻さん、そのときどう受け止めましたか」


「大事にされていないと感じました」

支援者
「夫さんは」


「責められている感じがしました」


感情の明確化


「悲しさ70」


「焦り60」


行動確認


「黙りました」


「話題を変えました」


相互循環提示

支援者
「整理すると、
妻:話す → 無視と受け止める → 悲しさ → 沈黙
夫:話しかけられる → 責められたと受け止める → 焦り → 話題転換
という循環が起きています」

二人
「その通りです」


構造の再提示

支援者
「問題は“聞いているかどうか”ではなく、受け止め方の循環かもしれません」


「そうかもしれません」


「そうですね」

家族面接で重要な点

・中立的言語で構造を提示
・片方に偏らない
・感情の数値化
・循環を図式化

これにより対立は構造へ転換します。

褒める

Ⅱ.信念階層マッピング

― 深層構造を可視化する技術 ―


① 技法の本質

信念階層マッピングとは、
表面の思考から核心信念までを階層構造で整理する可視化技法です。

階層は三層で整理します。

1.自動思考(瞬間的解釈)
2.中間信念(ルール・前提)
3.核心信念(自己・他者・世界観)


② 階層抽出プロセス

Step1:自動思考の特定

「その瞬間に浮かんだ考えは」


Step2:ルール化

「それはどんな前提に基づいていますか」


Step3:価値化

「それが揺らぐと何が揺らぎますか」


Step4:核心信念特定

「自分はどんな存在だと感じますか」


③ 逐語ケース

相談者E
「上司に注意されると強く落ち込みます」

支援者
「その瞬間の考えは」

E
「能力が低いと思われた」

支援者
「能力が低いと見られることは何を意味しますか」

E
「評価が下がる」

支援者
「評価が下がると」

E
「価値がない人間になる」

支援者
「整理すると」


階層マップ

自動思考
「能力が低いと思われた」

中間信念
「評価は常に高くなければならない」

核心信念
「評価が低いと価値が下がる」


④ マッピングの効果

階層が見えると、
・問題の本丸
・揺らぎの源
・感情の振幅要因
が明確になります。


⑤ 家族面接との統合

家族面接では、各人の信念階層を並べます。


「話を聞かれない=大切にされない」


「指摘される=否定される」

階層が並ぶと、衝突の源が見えます。

Ⅲ.高度実務ポイント

1.図式化は視覚共有が有効
2.数値化で変化を測定
3.循環を矢印で示す
4.公式化で言語固定

Ⅳ.学院理論との接続

ハートフルライフカウンセラー学院の「5つの公式」では、
 考え方 × 信念強度 = 感情振幅
と整理されます。

信念階層マッピングは、信念強度の源を可視化します。

家族面接型構造化は、複数の信念強度の相互作用を可視化します。

最終まとめ

家族面接型構造化とは、複数人の語りを同時に整理し、相互影響の循環を可視化する対話技法です。
信念階層マッピングとは、表面の思考から核心信念までを三層構造で整理し、感情と行動の源を明確にする可視化技法です。

夫婦

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