心のSOSに気づける人になる――自殺予防週間に考える「気づく・聴く・つなぐ」

「最近、少し元気がない気がする」
「以前より口数が減った」
「眠れていないように見える」
「大丈夫?と聞いても、『大丈夫』としか言わない」

家族や友人、職場の同僚など、身近な人にこうした変化を感じたことはないでしょうか。

心がつらい状態にある人が、いつも「助けてほしい」と言葉にできるとは限りません。
自分でも気持ちを整理できなかったり、周囲に心配をかけたくないと思ったりして、苦しさを抱えたまま普段どおりに振る舞おうとすることもあります。

だからこそ大切なのが、周囲の人が小さな変化に「気づく」こと、話に耳を傾けて「聴く」こと、そして必要な支援へ「つなぐ」ことです。

9月10日から16日は「自殺予防週間」です。

この機会にハートフルライフカウンセラー学院では、心理カウンセラーを養成するスクールの立場から、心のSOSに気づいたときに私たちに何ができるのかを考えます。

自殺予防週間とは

自殺予防週間とは、自殺対策基本法に基づき、毎年9月10日から16日まで実施される自殺予防のための啓発期間です。

国や地方公共団体、関係団体などが連携し、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指して、相談窓口の周知や啓発活動など、さまざまな取り組みを行っています。

自殺予防という言葉から、「専門家が取り組むもの」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、自殺予防には、医療や専門的な心理支援だけではなく、家族、友人、同僚など身近な人の存在も大切です。

その考え方の一つが「ゲートキーパー」です。

ゲートキーパーとは?特別な資格がなくてもできる心の支援

ゲートキーパーとは、悩んでいる人の変化に気づき、声をかけ、話を聴き、必要な支援につなぎ、その後も温かく見守る人のことです。

厚生労働省では、ゲートキーパーに期待される役割として、

「変化に気づく」
「じっくりと耳を傾ける」
「支援先につなげる」
「温かく見守る」

という4つを挙げています。

ゲートキーパーになるために、特別な資格は必要ありません。

すべてを一人で行う必要もありません。

身近な人の変化に気づくこと。
「どうしたの?」と声をかけること。
話を遮らずに聴くこと。

その一つひとつが、心の支援の入り口になります。

1.「気づく」――心のSOSは日常の変化に現れることがある

心の不調は、必ずしも「つらい」「苦しい」という言葉だけで表れるわけではありません。

たとえば、
・以前より元気がなくなった
・人との交流を避けるようになった
・仕事や学校でミスや遅刻、欠席が増えた
・食欲や睡眠など生活のリズムが変わった
・身だしなみに気を配らなくなった
・自分を責める発言が増えた
・「自分なんていないほうがいい」などの発言がみられる
といった変化が現れることがあります。

もちろん、一つの変化だけでその人の心理状態を決めつけることはできません。

大切なのは、普段その人と接しているからこそ感じられる「いつもと少し違う」という変化です。

心理カウンセリングでも、相手を理解するためには、言葉だけではなく、表情、声の調子、行動などにも注意を向けます。

「何となく気になる」

その小さな気づきを、そのままにしないことが支援の第一歩になります。

2.「聴く」――アドバイスより先に、その人の気持ちを受け止める

心配して声をかけたとき、相手が悩みを話してくれたとします。

そんなとき、私たちは相手を助けたいという思いから、
「そんなに考えなくても大丈夫」
「もっと前向きに考えたほうがいいよ」
「みんな大変なんだから」
「頑張れば何とかなるよ」
と言いたくなることがあります。

励ます側には善意があります。

しかし、つらさの中にいる人にとっては、「自分の気持ちは理解してもらえなかった」と感じることもあります。

そこで大切になるのが傾聴です。

傾聴とは、単に黙って話を聞くことではありません。

相手の話に注意を向け、その人が何を感じ、どのような思いを抱えているのかを理解しようとしながら聴くことです。

「それはつらかったですね」
「ずっと一人で抱えていたのですね」
「話してくれてありがとう」

まずは相手の言葉を受け止める。

すぐに答えを出そうとするのではなく、「あなたの話を聴いている」「あなたの気持ちを大切にしている」という姿勢を示すことが重要です。

「死にたい」と言われたら、どうすればよい?

もし身近な人から「死にたい」「消えてしまいたい」と打ち明けられたら、驚きや戸惑いを感じるのは自然なことです。

しかし、その言葉を軽く扱ったり、話題を変えたりせず、まず真剣に受け止めることが大切です。

「そんなことを言ってはいけない」と否定するのではなく、
「そこまでつらかったんですね」
「何が一番苦しいですか」
など、その人が抱えている苦しさを理解するために話を聴きます。

「自殺について尋ねることで、かえって自殺を促してしまうのではないか」と心配する人もいます。
しかし、WHO(世界保健機関)は、自殺について尋ねることが自殺行動を引き起こすわけではなく、むしろ不安を和らげ、理解されていると感じる助けになり得るとしています。

大切なのは、深刻な訴えを一人だけで抱え込まないことです。

3.「つなぐ」――支えることと、一人で背負うことは違う

悩んでいる人の話を聴くことは大切です。
しかし、身近な人がすべての問題を解決しなければならないわけではありません。

強い抑うつ状態が続いている場合や、「死にたい」「消えたい」といった気持ちを抱えている場合などには、医療機関や専門家、公的な相談窓口など、必要な支援につなげることが重要です。
「病院に行ったほうがいい」と突き放すのではなく、
「一人で抱えなくてもいいと思う」
「相談できるところを一緒に探してみようか」
といった形で、本人の気持ちを尊重しながら支援につなげていきます。

厚生労働省の「まもろうよ こころ」では、電話相談だけでなく、SNSやチャットなどによる相談窓口も紹介されています。
相談する方法は一つではありません。
その人にとって利用しやすい方法を一緒に探すことも、「つなぐ」という支援です。

「気づく・聴く・つなぐ」の先にある「見守る」

専門機関につないだから、そこで身近な人の役割が終わるわけではありません。

「その後どう?」
「また話したくなったら聞くよ」
そんな日常の何気ない関わりが、その人に「自分は一人ではない」と感じてもらうきっかけになることがあります。

厚生労働省が示すゲートキーパーの4つ目の役割も、「温かく見守る」ことです。

支援とは、大きなことをすることだけではありません。

気にかける。
声をかける。
話を聴く。
必要な場所へつなぐ。
そして、その後も見守る。

こうした人と人との関わりが、孤立を防ぐ力になります。

心理カウンセリングを学ぶことは「人の心に気づく力」を育てること

心理カウンセリングというと、「悩みを解決する方法を教えること」と考える人もいるかもしれません。
しかし、心理カウンセラーの大切な役割の一つは、相手の心を理解しようとすることです。
人は同じ出来事を経験しても、同じように受け止めるとは限りません。

「そんなことで悩む必要はない」と自分の価値観で判断するのではなく、
「この人にとって、この出来事にはどのような意味があるのだろう」
と相手の立場から考える。

そのために必要となるのが、心理学の知識であり、カウンセリングの技法です。

ハートフルライフカウンセラー学院では、心理学やカウンセリング、認知行動療法などを通じて、人の心を理解し、相手に寄り添うための知識と実践力を学びます。
心理学やカウンセリングを学ぶ意味は、心理カウンセラーとして活動することだけにあるのではありません。
家族との関係。
職場でのコミュニケーション。
友人との関わり。
そして、自分自身の心との向き合い方。

日常のさまざまな場面で、人の心を理解する力は生かすことができます。

真摯な態度

心のSOSに気づける人が増える社会へ

心のSOSは、いつもわかりやすい形で発せられるとは限りません。

だからこそ、

気づく。
聴く。
つなぐ。
そして、見守る。

その一つひとつが大切です。

特別な資格を持っていなくても、私たち一人ひとりにできることがあります。

そして、心理学やカウンセリングを学ぶことで、何となく感じていた「心配」を、相手を理解するためのより確かな知識と関わり方へと変えていくことができます。

9月10日から16日の自殺予防週間。
この機会に、身近な人の心の声に耳を傾けることについて考えてみませんか。
誰かの心のSOSに気づける人が増えること。
それも、誰もが安心して生きられる社会をつくるための大切な一歩です。

よくある質問

Q.ゲートキーパーになるには資格が必要ですか?

いいえ。
ゲートキーパーに特別な資格は必要ありません。
身近な人の変化に気づき、声をかけ、話を聴き、必要に応じて専門的な支援につなぎ、温かく見守る人は、誰でもゲートキーパーの役割を担うことができます。

Q.悩んでいる人には、どのように声をかければよいですか?

「最近、少し元気がないように見えるけれど、どうしたの?」「何かあった?」など、相手を心配している気持ちが伝わる言葉から始めます。
話してくれた場合には、すぐに評価や助言をせず、まず相手の気持ちに耳を傾けることが大切です。

Q.「死にたい」と言われた場合はどうすればよいですか?

言葉を軽く扱わず、本人の苦しさを真剣に受け止めます。
そして、一人だけで対応しようとせず、医療機関や専門家、公的な相談窓口など適切な支援につなげることが重要です。
差し迫った危険がある場合には、本人を一人にせず、速やかに緊急の支援を求めます。

Q.心理カウンセリングを学ぶことは自殺予防にも役立ちますか?

心理カウンセリングでは、相手の話を傾聴する方法や、感情・認知・行動を理解するための心理学的知識を学びます。
こうした学びは、心の変化に気づき、相手の気持ちを尊重しながら適切な支援につなげるための力にもつながります。

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