なぜ5月に孤独を感じるのか──その答えは心理にある

「春なのに、なぜか気分が沈む」「GWが終わってから、心がざわざわする」「他人と比べて、急に自信を失ってしまう」
──そんな声が多く聞かれるのが、まさに5月中旬です。

実はこの時期、心が不安定になりやすいことは心理学的にも裏付けられています。
この記事では、「なぜ5月に孤独感が増すのか?」を心理学の視点から解き明かしながら、自分を理解し整えるヒントをお伝えします。

後悔

1. 孤独感が高まる“5月病”の正体──適応疲労と社会的比較

4月は新生活の始まりであり、多くの人が期待と不安の中で新たな環境に適応しようと努力しています。
このような大きな変化のあと、5月には心と身体のエネルギーが一気に落ち込み、「適応疲労(adjustment fatigue)」が生じやすくなります。

心理学的には、ストレスへの反応には警告期 → 抵抗期 → 疲弊期という段階があります。
5月はちょうど「疲弊期」に当たり、自律神経の乱れや感情の落ち込みが起きやすくなります。

さらに、ゴールデンウィーク明けは「人と距離が生まれる時期」です。
人との接触が減ることで、ふとした瞬間に孤独感が押し寄せてきます。
そのとき私たちの心は、無意識のうちに他人との比較を始めています。

▶ 社会的比較理論(Festinger, 1954)

社会心理学者レオン・フェスティンガーは、人が自分の能力や価値を評価するとき、他人と比較する傾向があると述べました。
特に自信が揺らいでいるときほど、他人の「楽しそうな姿」「成功」「充実感」がまぶしく見え、それと比較して自分に価値がないように感じてしまうのです。

SNSがその傾向を強化していることは、現代における大きな心理的リスクといえるでしょう。

また、比較対象が多すぎる現代では、「劣等感疲労(inferiority fatigue)」という状態に陥りやすくなっています。
これは常に「誰かよりも劣っているのではないか」と不安になり、心が慢性的に疲れてしまう現象です。
こうした心理状態は、自尊心や自己肯定感の低下を引き起こし、より強い孤独感へとつながります。

2.比較と孤独の背後にある“スキーマ”と“自動思考”

認知行動療法(CBT)では、私たちの感情や行動は「自動思考」と「スキーマ」によって影響されていると考えます。

▶ 自動思考とは?

何か出来事が起きたとき、瞬間的に浮かぶ考え(例:「自分はだめだ」「みんなに嫌われている」)を指します。
この思考は多くの場合、自分でも気づかないうちに繰り返されています。

▶ スキーマとは?

自動思考の背景にある、過去の経験によって形成された“思い込みの枠組み”です。
たとえば、幼い頃に認められなかった経験があると、「私は愛されない人間だ」というスキーマが形成され、どんな状況でもそう解釈してしまうのです。

▶ 孤独感を強める思考の例

  • SNSで友人の結婚報告を見る → 「自分だけ取り残されている」と感じる

  • 同僚が褒められる → 「自分は必要とされていない」と思い込む

  • グループに入れない → 「私は好かれていない」と自動的に解釈する

これらは事実ではなく、歪んだ自動思考がスキーマに基づいて導き出した解釈にすぎません。

3.孤独感に影響するその他の心理学的要因

▶ 愛着スタイルの影響

愛着理論(ボウルビィ)によると、人は幼少期の親との関係性によって「安心型」「不安型」「回避型」などの愛着スタイルを形成するとされています。
不安型や回避型の愛着を持つ人は、他人との距離の取り方が難しくなり、対人関係で孤独感を感じやすい傾向があります。

▶ 認知資源の枯渇

5月は心理的ストレスの蓄積により、注意力や判断力が低下しやすくなります。
これを心理学では認知資源の枯渇(ego depletion)と呼び、他人と比較した結果に必要以上に反応してしまう背景にもなります。

▶ 孤独とホルモン

孤独を感じているとき、人の体内ではコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌されやすくなります。
慢性的な孤独状態が続くと、うつ症状や睡眠障害、免疫力の低下につながる可能性があるため、早めの対処が重要です。

孤独

4. 心のクセを整える3つの心理学的アプローチ

① メタ認知で「今、比べている自分」に気づく

メタ認知とは、自分の思考や感情を“一歩引いた視点”から観察する力です。
たとえば、SNSを見て落ち込んでいる自分に対して「今の私は他人と比べて自己評価を下げているな」と気づくだけで、感情に呑まれずに済むようになります。

この「気づき」は、CBT(認知行動療法)の初期ステップでもあり、自動思考と感情を切り離す上で非常に重要なスキルです。

② 認知のゆがみを修正する

自動思考は、しばしば事実ではなく、主観的で極端な思い込みを含んでいます。

たとえば「私はひとりぼっちだ」と思ったとき、実際には信頼できる友人が一人でもいれば、その思考は誤りである可能性が高いのです。

CBTでは「思考記録表」などを使い、

  • そのときの状況は?

  • どんな自動思考が浮かんだ?

  • その根拠と反証は?

  • もっと現実的な捉え方は? といった問いを通じて、思考を再構成していきます。

③ 自分軸を取り戻す──内的動機づけの強化

他人と比べるクセは、「自分の価値基準が外にある」状態です。
これを、「自分は何に意味を感じるのか」「どんなときに心が充実するのか」といった内的動機づけ(intrinsic motivation)へと切り替えていくことが、心の安定に繋がります。

心理学では、この内的動機づけこそが幸福感の土台を支えるとされており、自己決定理論(Self-Determination Theory)でも中心的に扱われています。

自分軸を取り戻すとは、「他人の人生ではなく、自分の人生を生きる」ことなのです。

5. 心理学は“孤独を力に変える”道具になる

孤独感や比較癖に苦しむとき、人は「自分が弱いからだ」と考えがちです。
しかし、心理学はそのような苦しみを「心の構造上の自然な現象」と捉え、それを扱う方法を与えてくれます。

  • どうしてこんな風に感じるのか?

  • どんな過去の経験が、今の反応を生んでいるのか?

  • どうすれば、違う視点でこの状況を見られるのか?

こうした問いに丁寧に向き合う姿勢こそが、孤独から回復する第一歩であり、心理学の学びはそれを可能にする「心の言語」を与えてくれるのです

向き合う

 

 ◆ハートフルライフカウンセラー学院で「心を学ぶ」という選択

ハートフルライフカウンセラー学院では、こうした心理学の理論と実践を体系的に学びながら、自分の人生と真摯に向き合う力を育てていきます。

・カウンセラー&メンタルトレーナー養成講座

もしあなたが今、5月という季節に「自分の心に違和感を覚えている」なら、 それは、人生の再スタート地点かもしれません。
学ぶことで、自分を取り戻す力が育つ── 心理学は、誰かのために学ぶものでもありますが、まずは「自分の心を丁寧に扱う」ためにこそあるのです。

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