なぜ人はSNSの「叩く側」に回ってしまうのか

――群集心理と“制裁の心理”を読み解く

インターネット空間では、誰かが批判され始めると、短時間のうちに多くの人が「その人を責める側」へと回り、批判の声が雪だるま式に膨らんでいくことがあります。
いわゆる 「SNS炎上」 と呼ばれる現象です。

しかし、多くの人が実際には当事者を直接知らず、出来事の背景も十分に把握していないにもかかわらず、批判の声に加わります。
では、なぜ人は「叩く群れ」に巻き込まれてしまうのでしょうか。

本稿では、心理学・社会心理学の知見を用いて、この現象の背景となる心の働きを整理しつつ、私たちが 「自分の心と距離を保ちながら、SNSと健全に関わる方法」 を考えていきます。

SNS炎上

1|炎上は「情報」ではなく「感情」を伝播させる

炎上の拡大が速い理由の一つは、SNSが 「感情の共有装置」 であるためです。

ある出来事を見た人が、怒り・驚き・不快感などを投稿する
→ その感情表現が、別の人の感情を刺激する
→ 刺激された人がまた感情を投稿する

この循環は、情報を熟考するよりも先に、「感じたまま反応する」 という心の働きによって生じます。

心理学では、このように 思考より感情が先に動き、集団で増幅していく現象 を、
  情動的伝染(emotional contagion)
と呼びます。

炎上は、「何が正しいか」ではなく、「どの感情が優勢か」 によって加速する傾向を持っています。

2|「同調行動」:群れに属することで安心したい

批判が広がっている場面では、
 「周りがそうしているから、自分も同じようにする」
という 同調行動 が強く働きます。

人は、無意識のうちに、多数派の意見=正しい意見と捉えやすい傾向があります。

特にSNSでは、
・匿名性が高い
・反対意見を述べると攻撃されやすい
・“場の空気”が速く形成される
という条件が揃っているため、
  「批判が増えている場では、批判に加わる方が安全になる」
という心理的圧力が生まれます。

ここには、個人の道徳や判断よりも、「集団に所属していたい」という根源的欲求 が関与しています。

SNS群衆

3|「内集団・外集団バイアス」:自分は“正しい側”にいたい

人は、自分が所属していると感じる集団(内集団)を肯定し、外の集団(外集団)を過小評価する傾向があります。

SNS炎上では、
・「叩く側」=正義・常識・社会的に正しい集団
・「叩かれる側」=問題を起こした人・常識外れの人
という 二分構造 が、無意識のうちに作られます。

その結果、
  「正しいのは自分たちであり、相手は罰せられるべきだ」
という意識が強化されます。

この心理を 内集団・外集団バイアス といいます。

ここで重要なのは、「正義感」は本来、相手への理解や対話を促す力にもなりうるのに、集団化すると「制裁の正当化」に変化しやすい という点です。

4|「モラル・アウトレイジ」:人は“制裁することで自分を肯定する”

SNSでは、誰かに「怒る」ことが、自分は正しい側にいるという感覚を強める ことがあります。

この心理を、
  モラル・アウトレイジ(moral outrage)=道徳的憤激
と呼びます。

怒りの表明には、
・自分は倫理的に優れているという感覚
・自己価値の回復
・ストレスの発散
という側面があり、
  「制裁している自分」を肯定する力が働きます。

つまり炎上は、誰かを救うためではなく、「自分を正しく感じたい」ために起こることがある のです。

5|では、どうすれば“巻き込まれずにいられるのか”

ここからは、認知行動療法(CBT) に基づく、実践的な心の整え方を示します。

①「感情」と「判断」を分ける

怒りを感じたときは、まずこう問いかけます。
 「私は今、何に反応しているのか?」
感情と言葉の間に“止まる時間”をつくることが重要です。

② 情報として「事実」と「解釈」を区別する

事実:確認可能な出来事
解釈:自分の頭の中で作られた意味づけ

炎上は多くの場合、解釈が拡散しています。

③ 自分が「どんな集団に属したいのか」を選び直す

同調は無意識に起こりますが、選択は意識的に行うことができます。

同僚

6|SNS時代に必要なのは「心のリテラシー」

SNSは本来、つながりや共感、表現のための場です。
しかしそこには、心を揺らす刺激も多く存在します。

だからこそ今、必要なのは
  感情が動いたとき、思考を取り戻す力
です。

それは知識ではなく、訓練によって身につく力です。
心理学は、そのために役立ちます。

7|終わりに

誰かを傷つけることは、「正義」ではありません。

そして、人は誰しも、「叩かれる側」に立つ可能性があります。

私たちは、「正しい人になる」のではなく、揺れながらも考える人でありたい のだと思います。

心は、守ることができます。
その方法を学ぶことができます。

その学びは、人生を守ります。


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