“なんとなく不調”は心のSOS:五月病を防ぐ3つのヒント
はじめに:その「なんとなく」は、心の適応メカニズムが限界に達しているサインかもしれない
新生活が始まり1か月。環境が大きく変わった後、人は自分の“内なる秩序”を取り戻そうとします。
しかし、それに失敗すると、「焦り」「倦怠感」「自己否定」などの形で、無意識に心の疲労が現れてきます。
これがいわゆる“五月病”です。
これは単なる「やる気のなさ」ではなく、心理的適応過程の破綻といえます。
本記事では、心理学の視点から五月病の正体を捉え、認知行動療法やストレス理論などの知見に基づき、再適応を助ける3つの実践的ヒントを紹介します。
1.五月病とは何か――心理学的に見る「適応障害」の構造
五月病は医学的な診断名ではありませんが、心理学では「適応障害」や「軽度のうつ状態」と非常に近い構造を持ちます。
◆ ラザルスの「ストレス理論」で説明するなら:
- 人は環境の変化に直面したとき、「これは自分にとって脅威か?挑戦か?」と評価します(一次的評価)
- 次に、「自分には対応する資源があるか?」と評価します(二次的評価)
この2つの評価が「脅威だが対処不能」となったとき、人はストレス過剰状態に陥り、身体や思考、感情に不調をきたします。
2.五月病の心理的サイン――「認知」と「感情」の変化を見逃さない
● 認知の歪み
- 「自分だけがうまくいっていない」
- 「こんなことで疲れている自分は弱い」
- 「みんなはもっと頑張れているのに」
これは自動思考(automatic thoughts)と呼ばれ、うつ傾向の初期兆候です。
認知行動療法ではこれを「認知の歪み(distortion)」として捉えます。
● 感情と身体のシグナル
- 朝の起床時に「説明できない重さ」を感じる
- 常に不安や焦りがつきまとう
- 肩こり、頭痛、胃腸の不調など
これらは、心理的な疲弊が自律神経系に及んでいる証拠です。
3.心理学で読み解く、五月病予防の3つのヒント
ヒント①:「予測可能性」で自律神経を整える
自律神経の乱れは、「未来の不確実性」によって悪化します。
人間の脳は、予測不能な状況に強いストレス反応を示す性質があります。
そのため、
- 毎朝決まった時間に起床
- 朝日を浴びる
- 決まったルートを歩く
といった“予測可能な習慣”を意識的に取り入れることで、脳の「安心回路(セーフティサーキット)」が刺激され、心拍・血圧・消化機能が安定してきます。
ヒント②:「思考記録」で認知を修正する
認知行動療法(CBT)で効果的なのが、「思考記録表」です。
やり方の例:
- 気分が落ち込んだ時、「その時、何を考えたか」を書く
- その思考は事実か? 他の見方は?と問い直す
- 修正した見方を書き、気分の変化を記録する
例:
✕「自分はこの仕事に向いてない」
→ ○「まだ慣れていないだけ。練習すれば改善できる」
ヒント③:「ポジティブ感情の意図的設計」
ポジティブ心理学のPERMAモデルでは、幸福感の持続には以下の要素が必要です:
- P:Positive Emotion(ポジティブ感情)
- E:Engagement(没頭)
- R:Relationships(人間関係)
- M:Meaning(意味)
- A:Achievement(達成)
五月病対策には、特に「P」と「E」が重要です。
具体的な方法:
- 「スリー・グッド・シングス」(その日よかったことを3つ書く)
- 没頭できる活動を日常に入れる(読書、絵、音楽など)
おわりに:心が弱いのではない、「順応が必要」なだけ
五月病は“異常”ではなく、“順応のプロセス”の一部です。
問題は、そのサインを無視することにあります。
心理学は、「自分を理解するツール」です。
この時期、心の仕組みを知り、自分にやさしく接することが何より大切です。
心のSOSを知識で受け止め、行動で癒す。
それが、五月病を防ぐ最も確かな方法です。
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