年末に心が落ち着かない理由を、心理学から考える

年末が近づくと、

「特別な出来事があったわけではないのに、心が落ち着かない」

「気持ちがそわそわして、考えがまとまらない」

そのような感覚を抱く方が少なくありません。

忙しさそのものは例年と変わらない。

むしろ、仕事や生活のリズムは整っているはずなのに、内側だけが静まらないように感じる。

この状態は、性格や気分の問題ではなく、年末という時期が人の認知や思考の働きに影響を与えている結果と考えることができます。

本稿では、年末にメンタルが落ち着かなくなる理由を、心理学、特に認知行動療法の視点から整理していきます。

1.年末という「時間の区切り」が心に与える影響

心理学では、人の心は出来事そのものだけでなく、時間的な文脈によっても大きく影響を受けると考えられています。

年末は、一年という長い時間の「終点」が意識に入りやすい時期です。

この「終わり」という感覚は、私たちの思考を自然と振り返りの方向へ向かわせます。

・今年はどんな一年だったか
・思うようにいかなかったことは何か
・来年はどうしたいのか

こうした問いが、意識に浮かびやすくなるのは、心が弱っているからではありません。

時間の区切りが、認知の焦点を切り替えているのです。

2.年末にメンタルが落ち着かなくなる心理学的背景

年末に感じやすい落ち着かなさの正体は、感情の問題というよりも、思考の増加にあります。

認知心理学では、人の注意や思考には同時に扱える容量があると説明されます。

年末は、次のような認知課題が同時に意識に上がりやすい時期です。

・日常業務の継続
・年内調整や締め切り
・人間関係への配慮
・一年の振り返り
・来年への見通しや計画

これらが並行して処理されることで、脳内では常に複数の判断が求められます。

結果として、
「頭が休まらない」
「気持ちが落ち着かない」
という主観的な感覚が生じやすくなります。

3.認知行動療法で考える「自動思考」の活発化

認知行動療法では、人の感情や行動に影響を与える要因として自動思考という概念を重視します。

自動思考とは、出来事に触れた瞬間、無意識に立ち上がる解釈や意味づけのことです。

年末は、過去・現在・未来の情報が同時に意識に入りやすいため、自動思考が連続的に生じやすい状態になります。

例えば、
・過去の出来事を思い出して評価する思考
・現在の負担を重く捉える思考
・未来を先取りして心配する思考

これらが次々と浮かぶことで、心は休まる時間を失っていきます。

重要なのは、この状態が異常ではないという点です。

年末にメンタルが落ち着かないのは、思考が過剰に働いているサインとも言えます。

4.「心の問題」と誤解されやすい年末の状態

年末になると、
「自分はメンタルが弱いのではないか」
「気持ちの切り替えができていないのではないか」
と自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。

しかし、心理学的に見ると、年末の落ち着かなさは構造的な状態です。

問題は、感情そのものではなく、思考が多層的に重なっていることにあります。

認知行動療法では、感情を直接操作しようとするよりも、思考との距離の取り方を重視します。

時間管理

5.年末に意識したい、認知行動療法的な整え方

年末に心を整えるために、無理に前向きになろうとする必要はありません。
むしろ、次のような視点が有効です。

① 思考を事実と同一視しない

浮かんだ考えを、「事実」や「結論」として即座に受け取らず、「今、こういう考えが浮かんでいる」と一段引いて捉えます。

これは、認知行動療法でいうメタ認知の姿勢です。

② 評価の時間軸を短くする

一年全体を評価しようとすると、思考量は一気に増えます。

一日、あるいは一週間単位で経験を整理することで、認知の負荷は大きく軽減されます。

③ 感情よりも環境構造を見る

気分の良し悪しではなく、
・情報に触れる量
・判断の回数
・生活リズム
といった構造を調整することで、心の状態は自然と安定しやすくなります。

コミュニケーション

6.心が整っている状態とは何か

心理学的に見た「心が整っている状態」とは、常に落ち着いていることや、不安を感じない状態を指すものではありません。

複数の考えの中から、どれを採用するかを選べる状態

これが、健やかな心の働きです。

思考に飲み込まれず、選択の余地を保てていること。
それ自体が、十分に自己調整力が機能している証拠です。

7.年末という時期をどう過ごすか

年末は、心が不安定になる時期ではなく、認知の動きが大きくなる時期です。

その動きを理解し、無理に抑え込まず、適切な距離を取ることができれば、心は必要以上に消耗せずに済みます。

認知行動療法は、特別な人のための技法ではありません。

日常の思考や感情を、現実的に扱うための枠組みです。

年末に心が落ち着かないと感じたとき、それは弱さの証ではなく、一年を生きてきた心の自然な反応かもしれません。

そのことを理解するだけでも、心の負担は少し軽くなるのではないでしょうか。

自分を責める


本稿で扱った認知行動療法の視点は、日常の心の揺れを理解し、整えるための実践的な枠組みです。

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