思春期の虎の巻[第七回] 十五歳・一 「中学部活、最後の日々」

2018.09.24

思い返すと
馬鹿にされてる
皆に好かれなくてはならない
この二つが今でも続く、幼い頃より作り上げられた、私のマイナスな心の法則だった気がします。

中学三年、私にはけ口として向けられた米田さん(仮)の怒りは、益々つのるばかりでした。
彼女とは一度も同じクラスになった事はありませんでしたが、彼女へのクラスメートの苛めはエスカレートしていたようです。

「森さんは、自信あるから嫌い!」

米田さんは私に言い放ちました。
私がその言葉に縮み上がっている事を知っていたからです。
彼女の目はギラギラと尋常ではなく光り、精神的に限界点を越えていることが見て取れました。

私は一切言い返しませんでした。
自分は偽善者だと、言われて当然の人間だと思い、自分を罰し続けました。
私は益々体に力が入らなくなっていき、目は虚ろになっていきました。

もうすぐ夏休み。三年生最後の地区大会が始まろうとしていました。
その頃になると、米田さんは部活に来なくなり始めていました。

部活のミーティングの時、私は部員に提案しました。
「米ちゃんは?米ちゃんも誘おうよ」
皆、驚いて私を見ました。

その頃には、二年生の後輩の数は三人に減っていました。
演劇部の風通しの悪さのせいだったのでしょうか。
時任先輩(仮)の妹さん、野崎先輩(仮)の妹さん、成績優秀な正宗さん(仮)、の三人きりです。
一年生も何人かいました。

夏休みの大会の時、米田さんは照明で参加になりました。
私は最期の大会に彼女も関われてほっとしました。

そして当日。卒業した先輩達が見に来ました。来なくなっていた二年生もやって来ました。
(燃え尽きてもいい!このまま燃え尽きてもいい)

私は舞台で不幸なお婆さんを演じきりました。
そして、幕が下りました。

控室でメイクを落とす鏡の中の私は、抜け殻の様でした。全てが憂鬱でした。
「…え、私のせい?」
時任先輩が私を見て他の先輩に囁きました。

そして私に「森さん、大丈夫?」と声を掛けて来ました。
私は返事もせず先輩の顔を見ました。
すると、「返事もしないで、生意気!」野崎先輩が言いました。

しかし、それと同時に野崎先輩の妹さんが「もう、やめて!」と目に涙を溜めて叫びました。

お姉さんの方はその剣幕にびっくりしていました。

周りの空気が読めないほど弱った私は、それでも漸く「…先輩のせいなんかじゃありません」と言った後、二年生の方に「今まで、ごめんね」と伝えました。

二年生達は控室の隅へ下がりました。野崎先輩の妹さんを庇う様に。

でも、中には「やっと分かったか!」と言う者もいましたが。
しかし、私はその言葉に腹は立ちませんでした。
先輩にされた嫌な事を、無批判に後輩にしていた自分が情けなかったからです。
憂鬱な頭を抱えて。

そうやって私の部活動は卒部となりました。

最後に、三年生と一年生だけのミーティングが行われました。
二年生から新しい部長と副部長を選ぶ為です。
結果は、時任先輩の妹さんが部長、野崎先輩の妹さんが副部長、に決まりました。

私はホッとしていました。
先輩への義理が果たせたからです。
馬鹿げた話ですが、私の中で時任先輩への服従は絶対でした。
まだ、客観性を持ち得ていず、依然として力に憧れていたのです。

しかし、学び、決めていることがありました。
(高校にいったら、絶対に威張らないぞ)と。

卒業式に話しは飛びますが、私達演劇部の三年生は、当日、二年生の三人からチューリップを一輪貰う事になります。

私は以外で、そして心底、自分が情けなかったです。
(ああ、私は馬鹿なせんぱいだったな。これでやっと演劇部から自由に成れる)
心からの解放感は働かなくなった私の頭の中でも、蒸気の様に広がりました。

帰り道、一緒になった同級生の三木さん(仮)は花を手に晴れやかな表情でした。

一番最初に書きましたが、
馬鹿にされてる
皆に好かれなくてはならない
この二つが幼い頃より作り上げられた、私のマイナスな『心の法則、スキーマだった気がしています。

それにより、尊敬されたい、皆に重要に思われたいと、私を間違った方向へと駆り立てたのもこのせいなのでした。

『心の法則、スキーマ』とは過去の体験から作り上げられ、その人の日々の行動や考えに影響を及ぼす、そう、正に法則です。

鬱になるとマイナスの心の法則が優勢になり、柔軟な考え方や行動を妨げます。

『心の法則』に気付くと、対処が出来るようになります。
その為には、自分の生い立ちや過去を見直す事が、一番の治療法となります。
これは、他の一般のカウンセリングにも有効な方法とされています。

認知行動療法はそれに気づかせることはもとより、その結果起こった『心の法則』に柔軟に向き合う事を、カウンセラーと共にサポートします。
トラブルは乗り越える事に意味があります。
どうか、自分は独りだなんて思わないで下さい。
きっと光は見えてくる筈ですよ。

 

(森詩子

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